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途上国の廃棄物回収~ウェイストピッカーと企業動向

シリーズ「食品産業のプラスチック包材にみるサステナビリティ」③

2021/11/24
中小路 葵

連載「食品産業のプラスチック包材にみるサステナビリティ」では、食品産業界における食品パッケージのプラスチック包材廃棄物を手掛かりに、今後の日本企業に求められる対応のあり方や取り組みの可能性などを深掘りしていく。第3回の本稿では、途上国の廃棄物回収を切り口にウェイストピッカーと企業動向について考察する。

途上国では今なお、ごみ集積場から使えそうなごみを拾い、お金に換えて生活している人がいることを、皆さんはご存知だろうか。ウェイストピッカーと呼ばれる彼らは、インフラの整っていない途上国において、廃棄物回収の重要な役割を果たしている。従来はインフォーマルセクター(途上国などにおいて公式に記録されない経済活動)として、ビジネスの担い手とは考えられていなかった彼らを組織化するスタートアップが、近年成功を収めるようになってきた。このような世界の動きの中で、大手グローバルメーカーもローカルなスタートアップとアライアンス(連携)を組むなど、途上国の廃棄物回収に積極的に関与している。SDGs(持続可能な開発目標)が声高に叫ばれ、最終消費に対しても企業の経済活動の責任が可視化される今、日本企業に求められるあり方とはどのようなものだろうか。本稿では、食品産業のプラスチック包材にみるサステナビリティ連載 第1回「転換点を迎えたビジネスデザイン」(2021年11月11日付掲載)、第2回「途上国の出口戦略~カスケードリサイクルの可能性」(2021年11月15日付掲載)に続き、プラスチック廃棄物回収を切り口に、SDGs時代の企業のあり方を考察する。

1. 途上国における廃棄物回収の現状

途上国では、公共部門のゴミ収集が機能していないところがほとんどである。毎日のようにゴミ収集車が来て、家庭ごみを収集してもらえる日本に住む私達には想像し難いことである。だが、自治体のゴミ収集が機能しない国では、家庭で排出されるゴミは分別されず、そのまま河川や海などの環境中に流出したり、一纏めにゴミ捨て場や廃棄物集積場に野積みされたりしている。

そこで、ウェイストピッカーと呼ばれる人々が、ゴミの山からペットボトルや金属などの有価物を拾い、リサイクル業者に売り渡すことで、一部、回収が行われている。彼らも有価物を売ったお金で日々の生計を立てることができるため、今もウェイストピッカーが多く存在する。こうした経済活動は「インフォーマルセクター」の一部であり、社会的にも差別の対象となり排除される傾向にあるが、途上国における廃棄物からの有価物回収の多くが、ウェイストピッカーによるものといわれている。

2. ソーシャル・インクルージョンという動き

上記のように、ウェイストピッカーの活動は、実質的な社会では不可欠な役割を果たすものの、ビジネスの担い手とはみなされず、インフォーマルセクターにとどまる社会的弱者であった。

ところが、近年、このウェイストピッカーをフォーマルセクターとして取り入れる「ソーシャル・インクルージョン」という動きが出てきている。ソーシャル・インクルージョンを直訳すると「社会的抱合」だが、全ての人々を孤独や孤立、排除や摩擦から援護し、健康 で文化的な生活の実現につなげるよう、社会の構成員として包み支え合うという理念である。

たとえば、ブラジルにおけるリサイクルの90%は、40万~80万人いるといわれるウェイストピッカーによって行われており、2002年にはブラジルの法律によってウェイストピッカーは公式な職業として認められた。また、グローバル組織の「ウェイストピッカー協会」も設立され、各国に支部を作り、行政との接点を持ちながら、ボトムアップでのソーシャル・インクルージョンが進められている。このように、非公式な経済活動主体であったウェイストピッカーを社会活動の主体として認めることで、その働き方のビジビリティ(Visibility:可視化)も上がり、社会構成員としての基本的な権利を付与する動きが広がっている。

3. ウェイストピッカーを支援するスタートアップ

ソーシャル・インクルージョンが広がる中で、途上国では、ウェイストピッカーを支援するスタートアップが生まれ、成功を収めるものも出てきている。

たとえば、2014年に設立されたニューホープエコテック(New Hope Ecotech)は、ブラジルとペルーでウェイストピッカー向けのスマートフォンアプリを提供し、彼らが回収した廃棄物をメーカーに売却するビジネスモデルが作られた。アプリには、廃棄物が集積される場所をマップで表示するとともに、廃棄物ごとのポイントも表示し、ウェイストピッカーに回収インセンティブが付与される。ウェイストピッカーから買い取った廃棄物は飲料品メーカーなどに売却されるが、ここでメーカーには認証を授与し、メーカー側も「エシカル(倫理的、または人や社会、環境に配慮する)なリサイクル」をアピールし、企業のブランディングに役立てられるビジネスモデルとなっている。

また、ナイジェリアでも同様に、ウェイストピッカーを支援するスタートアップが成功している。

2012年にナイジェリア最大の都市ラゴスで設立されたウィサイクラー(Wecyclers)は、ウェイストピッカー向けに荷車付き自転車を貸し出し、彼らの廃棄物回収の効率化を図っている。同時に、スマートフォンアプリに現在の廃棄物の買い取り価格を表示し、インセンティブの付与も行っている。集められた有価物は、重さと買い取り価格に応じて、食料などに交換されているとのことである。ウィサイクラーは小売店を廃棄物のピックアップポイント(回収所)としてネットワーク化し、そこでウェイストピッカーが回収してきた廃棄物を交換できる仕組みを作っている。サービスが大きくなった現在では、自転車だけでなくモーター付きの三輪車や小型のバン(貨物車)も現れ、ラゴスの街角では、ウィサイクラーのロゴを多く見かけることができる。人口が増加し廃棄物回収がますます深刻な課題となるラゴスの行政も、彼らとパートナー提携を結ぶに至っている。

4. ソーシャル・インクルージョンのもとで動き出す企業

3章にて述べたように、ウェイストピッカーを経済活動の担い手として巻き込むことで社会問題を解決しながら、ビジネスとしても利益を上げるスタートアップが盛り上がりを見せている。そんな中、大手グローバル企業も廃棄物回収の領域で現地スタートアップと積極的に提携し始めた。

ネスレ(Nestlé)は上述のニューホープエコテックからペットボトルを買い取り、「エシカルなリサイクル」をアピールしている。また、ウィサイクラーともパートナー提携を結び、ピックアップポイントのネットワーク展開などを支援している。

同様に、ユニリーバ(Unilever)もウィサイクラーに2019年、5万ドルの支援をした他、フィリピンでは、リニス・ガンダ(Linis Ganda)をはじめとするリサイクル業者と共に、2012年以来、マニラ首都圏と近隣の州で、食品包材の回収プログラム「ミシス・ワラスティク(Misis Walastik)」を実施している。ここではプログラム実行主体のウェイストピッカーとジャンクショップ(製品として利用価値のない品物・廃品を扱う店)業者に対して、回収したプラスチックの重量に応じた現金によるインセンティブを与え、食品包材の回収を促進している。

こうした現地におけるパートナー提携での廃棄物回収にとっては、これまで直接的なアプローチが難しかったウェイストピッカーとの関係を築くことができ、廃棄物回収促進に貢献することで、実効的なSDGs活動が行えるようになったという意味がある。

他にも、多くの大手グローバルメーカーが積極的に現地スタートアップと提携する事例が散見される。途上国における廃棄物回収において、ウェイストピッカーのソーシャル・インクルージョンによる新しい流れに、大手企業も関わりを強めていることが伺える。

5.日本企業にも求められるSDGsのあり方

SDGsの潮流において、消費後の廃棄物に関しても企業の責任が問われる時代である。特に、各国・地域に商品を展開するグローバルメーカーにとっては問題の根が深い。回収の問題は国全体の経済活動やパブリックセクター(公的機関)の問題とも深く関わり、1社だけでは到底解決できないからである。

しかしながら、上述したように途上国における廃棄物回収においては、ウェイストピッカーが経済の担い手として社会的に認知され、成功するスタートアップも生まれてきた。この中で、大手グローバルメーカーもそうしたスタートアップと提携するなど、SDGs順守の流れも相まって、回収へのコミットメントを強めている。今後、日本企業も同様の行動が求められてくるのではないだろうか。

現地の廃棄物回収・リサイクルの流れを理解し、ローカル企業も含めて広く提携を進めることが、有効な打ち手の1つとなり得る。自社単独で商品の包材置換などに取り組むことももちろん重要ではあるが、現地の現状を精査し、ローカルでの企業提携も含めた広い視野で具体的な行動に移すことが求められるだろう。

アフリカのことわざに「早く行きたければ、ひとりで行け。 遠くまで行きたければ、みんなで行け」という言葉がある。まさに、SDGsという大きな問題に立ち向かう今、企業が大切にするべき理念ではないだろうか。

参考文献

ウィサイクラー(Wecyclers)公式サイト(2021年9月29日確認)

Afrik21公式サイト(2021年9月29日確認)

ユニリーバ(Unilever)公式サイト(2021年9月29日確認)

【専門用語集】

掲載回 専門用語 意味
2.3.4 SDGs 持続可能な開発目標を指す。
3 ウェイストピッカー ごみ集積場から使えそうなごみを拾い、お金に換えて生活している人のこと。
3 インフォーマルセクター 途上国などにおいて公式にされていない経済活動をいう。
3 スタートアップ 新しいビジネスモデルで市場を開拓し、短期間で目標を達成させる企業や集団のこと。
3 アライアンス 企業間連携。
3 有価物 廃棄物ではなく、他者に有償で売却できる物のこと。一般的にはリサイクル業者等が購入する。
3 ソーシャル・インクルージョン ウェイストピッカーを経済活動の担い手とするなど、一般に非公式な経済主体も社会構成員として組み入れること。社会的抱合。
3 エシカルなリサイクル 人や社会、環境に配慮した消費行動のこと。

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【関連レポートはこちらから】

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