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欧州のプラスチック政策とグローバル食品メーカーのリサイクル先進事例

シリーズ「食品産業のプラスチック包材にみるサステナビリティ」⑤

2021/11/29
富田 愛梨

連載「食品産業のプラスチック包材にみるサステナビリティ」では、食品産業界における食品パッケージのプラスチック包材廃棄物を手掛かりに、今後の日本企業に求められる対応のあり方や取り組みの可能性などを深掘りしていく。本稿では、欧州のプラスチック政策とグローバル食品メーカーのリサイクル先進事例などを紹介する。

1. 欧州で進むプラスチック政策

世界でいち早く環境政策を推進してきた欧州では、近年SDGsの流れを受け、プラスチック廃棄物のリサイクル政策も進んでいる。リサイクル難易度の高いプラスチック包材廃棄物(以下、「プラ包材」)においては、既に1994年12月に「容器包装と容器包装廃棄物に関する指令(Directive on Packaging and Packaging Waste)(欧州議会・理事会指令 94/62/EC)」を制定しており、2018年5月に定められた目標値では、欧州連合(EU)各国一律で、2025年までにプラ包材のマテリアルリサイクル率50%、2030年までには55%を達成することが設定されている。

また、欧州委員会は「欧州グリーン・ディール」、「欧州新産業戦略」の内容を含む新たな行動計画である「新循環型経済行動計画」を2020年に公表した。本計画では、EUが循環型経済モデルに移行し、従来よりも包材の設計や製造を含むライフサイクルに焦点を当て、2030年までにすべての包材を再利用・リサイクル可能とすることを目指している。EU各国はこれらの政策を受け、具体的な取り組みを推進していく必要がある。

【図表1】EUにおける項目別マテリアルリサイクル率目標

図 EUにおける項目別マテリアルリサイクル率目標

(出所)European Commission 「Packaging waste」を基に当社作成

2. EU各国のリサイクル対応状況

ではEU各国のリサイクルの実態は、どのようになっているのだろうか。図表2はEU加盟国のプラ包材に関するマテリアルリサイクル率、および熱エネルギー回収率を表している。EUが2025年までに要求するマテリアルリサイクル率50%に到達している国は上位8カ国、2030年の要求水準の55%に達している国は、わずか上位3カ国(リトアニア、ブルガリア、チェコ)にとどまっている。

フランスのようにマテリアルリサイクル率は低水準でも、他国に比べ熱エネルギー回収に注力している国も見受けられる。だが、EU内のリサイクル率の平均値は41%と、2030年目標値の55%はおろか2025年目標値の50%にも遠く及ばず、さらなるマテリアルリサイクルを促進する取り組みが求められている。

【図表2】EU加盟国のプラスチック包材に関するマテリアルリサイクル率および熱エネルギー回収率(2018年)

グラフ 熱エネルギー回収率

(注)EU27カ国平均に英国は含まれていない
(出所)Eurostatを基に当社作成

3. グローバルメーカーの先進事例

EU各国において、目標値に向けて依然として厳しい状況が続く中、グローバル食品・菓子メーカーは工夫をこらした取り組みを行っている。

(1) 再生プラスチックによる再生利用

モンデリーズ・インターナショナル(Mondelez・International)では、米国包装メーカーのベリーグローバルグループ(Berry Global Group)と2020年に提携し、2022年から欧州全土でクリームチーズ製品フィラデルフィア(Philadelphia)の包材に再生プラスチックの使用を計画している。包材には、ベリーグローバルグループがサウジアラビアのサビック(SABIC)と開発した再生プラスチック含有のパッケージが使用される見込みである。

また、2020年にはネスレ(Nestlé)、ペプシコ(PepsiCo)、ロレアル(L’Oréal)の3社でフランスのプラスチックリサイクルスタートアップ企業カービオス(Carbios)に資金を提供し、カービオスは新しい酵素を用いてPET(ポリエチレンテレフタレート)向けの再生プラスチックを生成する技術を開発予定である。

(2) 素材面での包材置換

ネスレでは、2019年に食品業界初の包材研究所を設立し、生分解・堆肥化可能な包材の研究を行っている。また、ココアパウダー商品のネスクイック(Nesquik)や、スナックバー菓子のイエス!(YES!)などの製品では紙包材を使用し、素材面の包材置換を行っている。またフランスでは、2020年9月、グローバル初の試みとして当国で販売されるマギー(Maggi)コンソメキューブの包装をマルチレイヤー(多層構造)のラミネート包材(異なる性質のフィルムを貼り合わせた包材)から、リサイクル可能な紙ベース包材に置き換えを行っている。

ペプシコでは、2018年同社のスナック菓子レイズ(Lay’s)およびクルクレ(Kurkure)の包材を100%バイオマス由来で堆肥化可能な包材へと置き換えの試みを始めており、米国、チリ、インドにおいてその取り組みを行っている。

(3) 設計面での包材置換

マーズ(Mars)は、フランスでチョコレート菓子のエムアンドエムズ(M&M’S)の包材をリサイクル可能な単一原料で設計している。1種類のプラスチック樹脂(ポリエチレン)で作ることにより、地元の包装廃棄物の収集・分別システムに従ってリサイクルが可能となるようにした。

ユニリーバ(Unilever)は、トルコにおいて現地発のイニシアチブÇEVKO Foundationに参画し、原料メーカーのモンディ(Mondi)、包材メーカーのジンダル・フィルムズ(Jindal Films)およびポリナス(Polinas)とパートナーを組んでいる。粉末スープのクノール(Knorr)は、2018年から包装をリサイクル可能な単一原料包材(PP由来)への置き換えをパートナーと推進し、実用化に成功したことから世界各国・地域への横展開を視野に入れている。

このように、大手グローバル食品・菓子メーカーの各社では、欧州における規制にいち早く対応するため、循環経済の視点を導入した先進的な取り組みを始めている。 こうした取り組みが、いずれ世界へ波及しグローバルスタンダードとなり得ることを考えると、日系企業においても最新の欧州の政策動向をフォローし、グローバル企業の先進事例に倣った施策を柔軟に模索・検討していくことが必要不可欠である。

参考文献

・JETRO「欧州委、新たな循環型経済行動計画を発表」(2021年10月14日確認)

・Circular Economy Hub「欧州委員会が新たな「Circular Economy Action Plan(循環型経済行動計画)」を公表」(2021年10月14日確認)

・European Commission 「Packaging waste」(2021年10月20日確認)

・Eurostat「Recycling rates of packaging waste for monitoring compliance with policy targets, by type of packaging, Plastic packaging」(2021年8月23日確認)

・Eurostat「Packaging waste by waste management operations, Recovery – energy recovery from packaging waste」(2021年8月23日確認)

・一般社団法人産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センター 2021年7月刊『リサイクルデータブック 2021』(Appendix EUの資源消費、資源効率、廃棄物、リサイクル、SDG12統計)(2021年10月14日確認)

・Mondelez 「MONDELĒZ INTERNATIONAL ANNOUNCES SIGNIFICANT PACKAGING INNOVATION WITH PHILADELPHIA PACKAGING SET TO BE MADE WITH RECYCLED PLASTIC」(2021年10月15日確認)

・Berry Global Group「Berry Helps Partners Achieve Momentous Sustainable Packaging Goals」(2021年10月15日確認)

・GreenBiz「Why PepsiCo, L’Oreal and Nestle are banking on this French plastics recycling startup」(2021年10月20日確認)

・Nestle 「Nestlé inaugurates packaging research institute, first-of-its-kind in the food industry」 (2021年10月15日確認)

・NS PACKAGING「Nestle unveils plans to develop more sustainable packaging to tackle plastic waste」(2021年10月20日確認)

・Confectionery news.com「Nestlé launches second product in recyclable paper packaging as part of its 2025 plastic waste pledge」(2021年10月20日確認)

・PepsiCo「PepsiCo Latin America Doubles Down on Its Commitment to Inclusive Recycling by Launching “Recycling with Purpose”, a Program That Will Promote a Circular Economy」(2021年10月20日確認)

・THE TIMES OF INDIA「PepsiCo to launch plant-based packaging」(2021年10月20日確認)

・Mars「Plans To Rethink Our Packaging, Today」(2021年10月20日確認)

・Unilever「Rethinking plastic packaging」(2021年10月20日確認)

【専門用語集】

掲載回 専門用語 意味
5 容器包装と容器包装廃棄物に関する指令 包装廃棄物の再利用、リカバリー、リサイクルなどを通し、環境保護とEU域内の産業競争力の調和を図ることを目的として、1994年12月にEUにて採択された指令。
5 マテリアルリサイクル 廃棄物(マテリアル)を原材料として再利用すること。
5 欧州グリーン・ディール 人々の幸福と健康の向上を目的とし、欧州の温室効果ガスの排出を実質ゼロにして気候中
5 欧州新産業戦略 欧州における産業のリーダーシップを維持・強化するため、3つの主要優先課題「欧州産業の競争力の維持」「欧州グリーン・ディール」「欧州デジタル化」の実現を支援する戦略。
5 新循環型経済行動計画 持続可能な循環型経済を実現するため、環境にやさしい未来に適した経済の実現、競争力と環境保護の両立、消費者の権利強化を目的とした、EU加盟国に適用される法律。
5 循環型経済モデル 従来の「Take(資源採掘)」「Make(作る)」「Waste(捨てる)」というリニア(直線)型経済システムにおいて、活用されずに廃棄していた製品や原材料を「資源」として活用・循環させる。
5 PET ペットボトル等の原料。ポリエチレンテレフタレート。合成繊維やテープ素材など幅広い用途に用いられている。
5 マルチレイヤー 多層構造のこと。
5 ラミネート包材 ラミネートとは積層するという意味。異なる性質のフィルムを貼り合わせ、それぞれの特徴を生かした性能の包材。

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