CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)

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Cash Conversion Cycle(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の頭文字を取った略称で、仕入債務を支払ったのちに売上債権の回収までの所要日数を示す財務指標である。

端的に言うと、資金繰りが安定しているかどうかを表しており、小売業や製造業のように在庫を多く抱える業種においては非常に重要視される。類似の経営指標として運転資本が挙げられるが、運転資本は「金額」を測る指標であることに対して、CCCは「期間」を測る指標である点が異なる。
CCCは「棚卸資産回転期間+売上債権回転期間-仕入債務回転期間」で計算される。CCCが短い企業はキャッシュの滞留が少ない、ということを意味し、運転資本に対する投資も少なく済むため経営が安定する。運転資本を圧縮して資産効率を向上させることが求められる業種においては、CCCの期間短縮が財務戦略における目標のひとつとなる。

CCCを短縮する方法として、理論的には以下の3つがある。
(1)棚卸資産回転期間を短くするために、商品や原材料の在庫削減等で在庫日数を短くすること。
(2)売上債権回転期間を短くするために、取引条件の緩和等で売掛金を早期に回収すること。
(3)仕入債務回転期間を長くするために、取引条件の緩和等で買掛金の支払を遅らせること。

また、上記の3つの方法を追求した企業として1990年代のDELL(デル・テクノロジーズ)が挙げられる。
当時の国内PCメーカーは完成品の間接販売がほとんどであったことに対して、現在もそうだがDELLはBTO(Build To Order)という直接販売による受注生産方式を採用していた。これは消費者の注文を受けてから製品を生産するビジネスモデルである。また、DELLはPC部品メーカーとの取引条件として、DELLの倉庫に保管されているPC部品がPCとして組立・出荷されるまでは、そのPC部品はPC部品メーカーの在庫としていた。さらに、売上債権の期間短縮については、注文を受けた段階でクレジットカード等の支払いによって入金を極力早めていた。
これによりDELLは買掛金の支払いよりも前にキャッシュが回収できており、在庫日数も圧倒的に短いため、マイナス期間のCCCが実現できた。

(中村 祐也)